【インボイス制度の経過措置】6年間の仕入税額控除と2割特例

記事監修
(株)ライトコード代表取締役 金城直樹
元フリーランスエンジニア。「自分で作ったものを自分で触れないのは物足りない」と考え、BtoC向けのWebアプリ・モバイルアプリ開発を専門とした(株)ライトコードを2011年に創業。
「好きを仕事にするエンジニア集団」を掲げ、現在、50人以上のエンジニアを束ねる。会社経営の傍ら、今だに第一線で活躍するエンジニアでもある。開発のことなら何でもござれな「何でも屋」。趣味は釣り。

この記事を3行で解説

①インボイス制度には事業者の負担を軽減するための「経過措置」があり、主に「6年間の仕入税額控除の経過措置」と「2割特例」がある。
➁仕入税額控除の経過措置は段階的に控除率を減らしながら負担を和らげ、2割特例は新たに適格請求書発行事業者となった人の消費税負担を2割に抑える制度。
➂インボイス登録は取引先の意向や自身の事業方針に応じて慎重に判断するべき。


スライム師匠スライム師匠
編集長殿、インボイスの記事の補足じゃ!
インボイスには「経過措置」という制度があるんじゃ
編集長編集長
経過措置
スライム師匠スライム師匠
いきなり始まったインボイス制度だから、全然準備ができてない事業者も多い。
徐々にインボイス制度を浸透させていくために「経過措置」を設けたのじゃ
編集長編集長
なるほど!
たしかに、全国の事業者がいきなりインボイス登録をするのは不可能よね。
例えば、どんなものがあるの?
スライム師匠スライム師匠
主に「6年間の仕入税額控除の経過措置」「2割特例」の2つじゃ。
どちらもインボイス登録した者にメリットが大きい制度じゃ
編集長編集長
ほ~気になるわ!
師匠、インボイス制度の経過措置の深堀りよろしく!🫵ビシッ
目次

経過措置➀6年間の仕入税額控除の経過措置

インボイス制度実施以降、免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外から行った課税仕入れに係る消費税額を控除することができなくなります。

そこで、始まったばかりの負担を少しでも和らげるために「6年間の仕入税額控除の経過措置」という仕組みが用意されることになりました。

この経過措置は、いきなり消費税を全額負担するわけではなく、少しずつ新しい制度に慣れていけるように最初は負担が少なく、段階的に上がっていくようになっています。

控除率は次のように段階的に変わる!

2019年10月~2023年9月全額控除
2023年10月~2026年9月控除率80%
2026年10月~2029年9月控除率50%
2029年10月以降控除率は廃止

具体的に見てみましょう!

まずは、上記の経過措置がない場合を考えてみます。

(例)売上1100万円(税込)の場合
売上で預かった消費税は 100万円 で 経費で支払った消費税 50万円とする


適格請求書発行事業者と取引した場合

取引先全てがインボイス登録を行っている適格請求書発行事業者の場合は、

100万円 – 仕入税額控除 50万円 = 50万円

経費で支払った消費税 50万円は控除されるため、50万円の消費税の納税することになります。


適格請求書発行事業者以外と取引した場合

しかし、取引先全てがインボイス登録を行っていない事業者と取引した場合は、

100万円 – 仕入税額控除 0万円 = 100万円

経費で支払った消費税 50万円は控除されず、まるまる100万円を納税することになってしまうんです…!

では、「6年間の仕入税額控除の経過措置」の期間内はどうなるか、スライム師匠に教えてもらいましょう!

スライム師匠スライム師匠
上記のように、まるまる100万円を納税することがないように経過措置は存在しておる。
2023年10月~2026年9月までは、インボイス番号がなくても 控除率80% が適用されるようになっておるんじゃ
編集長編集長
本来、適格請求書発行事業者との取引だった場合の経費で支払った消費税 50万円の8割。
つまり、40万円が仕入税額控除として扱われるってこと?
===
100万円 – 仕入税額控除 40万円 = 60万円
スライム師匠スライム師匠
正解じゃ!
適格請求書発行事業者ではない業者と取引して、まるまる100万円支払う必要がないのはありがたい仕組みじゃろ?
では、2026年10月~2029年9月の5割控除だとどうなる?
編集長編集長
本来、適格請求書発行事業者との取引だった場合の経費で支払った消費税 50万円の5割。
つまり、25万円が仕入税額控除として扱われるから…
===
100万円 – 仕入税額控除 25万円 = 75万円
スライム師匠スライム師匠
正解じゃ!
勇者より筋が良いな(笑)
編集長編集長
期限付きですが、適格請求書発行事業者にとって、ありがたい仕組みになってるのね!
スライム師匠スライム師匠
うむ!
もう1つ、「2割特例」という経過措置もあるから見てみるぞ

経過措置➁2割特例

インボイス制度がはじったのを機に、免税事業者の範囲内なのに、適格請求書発行事業者として課税事業者に切り替えたとします。

すなわち、課税売上高が1000万円以下の少ないままで、今まで支払うことがなかった消費税を支払うことになるわけですから、事業者として大きな負担となってしまいます。

そこで、「いきなり消費税を納めるのは大変…」という方が多いのも現実問題としてでてきます。

そのため、「6年間の仕入税額控除の経過措置」のほかに「2割特例」という特別な経過措置が用意されているんです!

2割特例とは?

2割特例とは、売上にかかる消費税の2割を納税するという簡単な計算方法になります。

インボイス制度を機に、免税事業者から適格請求書発行事業者になった方が対象です。

2割特約の期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの3年間となっています。

まとめると

・インボイス制度を機に、
・免税事業者から適格請求書発行事業者になった方が対象で
・納付税額を売上にかかる消費税額の2割とすることができる。
2023年10月1日から2026年9月30日までの3年間の
特例

具体的に見てみましょう!

さっきと同じ例でやってみます!

(例)売上1100万円(税込)の場合
売上で預かった消費税は 100万円 で 経費で支払った消費税 50万円とする


消費税の納税額はいくらになるでしょう?

計算方法はとても簡単でシンプル。

2割特例の場合、「経費で支払った消費税 50万円」の存在は無視できます。

売上で預かっている消費税額が100万円ですので、2割の20万円が消費税の納税額となります。

ええ!?

6年間の仕入税額控除の経過措置の場合より、ぐーーんと減税されていることが分かりますね!

編集長編集長
師匠、これは簡単で分かりやすい!
しかも、負担額が大きく減るのは本当にありがたい!
スライム師匠スライム師匠
そうじゃな!
政府としても、事業者に大きな負担にならないようにこの仕組みを導入したのじゃ。
ただし、2023年10月1日から2026年9月30日までの3年間だから、もう少しでこの措置の恩恵は受けられなくなるぞ
編集長編集長
そんな~!
スライム師匠スライム師匠
だが、6年間の仕入税額控除の経過措置のほうは2029年9月まで続くから、段階的に対策はできるな
編集長編集長
なるほどね。
ただ、消費税の負担のほかに、業務負荷や経営圧迫の懸念についての指摘の声が未だに大きいのも現実ね
スライム師匠スライム師匠
2024年12月20日、埼玉県議会にて自民党県議団などがインボイス制度の廃止を求める意見書案を提出し、賛成多数で可決されたのは記憶に新しいな!
編集長編集長
今後、インボイス制度はどうなっていくかは未知数ね。
インボイス登録しないことで消費税の納税義務を免れる反面、既存の仕事を失ったり、新規の仕事が入らなくなってしまう可能性があるのも事実。
難しい選択ね
スライム師匠スライム師匠
しかし、最終的に登録するかどうかは、取引先の事情やお主自身の働き方によって変わる!
顧客や取引先企業の意向を確認したうえで、お主にとって最善の選択をするんじゃ!

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