TCP/IP を発明したビントン・サーフ!インターネットの父は「スーツのおじさん」

記事監修
(株)ライトコード代表取締役 金城直樹
元フリーランスエンジニア。「自分で作ったものを自分で触れないのは物足りない」と考え、BtoC向けのWebアプリ・モバイルアプリ開発を専門とした(株)ライトコードを2011年に創業。
「好きを仕事にするエンジニア集団」を掲げ、現在、50人以上のエンジニアを束ねる。会社経営の傍ら、今だに第一線で活躍するエンジニアでもある。開発のことなら何でもござれな「何でも屋」。趣味は釣り。

記事を3行で解説

➀「インターネットの父」ビントン・サーフは、聴覚障害を持つ妻との意思疎通への願いからTCP/IPを開発し、世界をつなぐ「共通言語」を作り上げた。

➁ 現在はGoogle副社長として「惑星間インターネット」の構築に挑み、80代にしてなお人類の知性を宇宙へ広げる活動を続ける。

➂生成AIに対しては「自信満々な嘘つき」と警告しつつ、クリティカル・シンキングを持って活用すれば「限界を超える武器」になると説く。

対象:フリーランスエンジニア以外にも読んで欲しい記事


全てがインターネットに繋がってるのはなぜ?

カトウカトウ
ちょっと不思議に思ったんだけど…
私のiPhoneと、家のWindowsパソコンと、駅の自動改札機って、全然違う機械よね?
にゃん八にゃん八
そうだ、メーカーも仕組みもバラバラだぞ
カトウカトウ
なのに、なんでみんな同じインターネットに繋がって、メッセージを送ったりできるの?
普通、繋がらなくない?
聖徳聖徳
鋭い着眼点である〜。
実はインターネットが生まれたばかりの頃はバラバラで繋がらない状態だったのである~
にゃん八にゃん八
その混沌とした世界に、たった一つの「共通言語」を作って世界を繋げた伝説の男がいる
カトウカトウ
どうやって繋げたんだろう?
伝説の男…?
にゃん八にゃん八
その名はビントン・サーフ
「インターネットの父」と呼ばれ、今もなおスリーピースのスーツで世界を飛び回るダンディおじさん!
カトウカトウ
へええ!
インターネットの父って何人いるの!?
目次

混沌としたネットワークの時代と「共通言語」の必要性

時計の針を1960年代へと戻しましょう。

当時、コンピュータはまだ巨大な計算機に過ぎませんでした。

この時代、アメリカ国防総省のARPA(高等研究計画局)の資金提供により、世界初のパケット通信ネットワーク「ARPANET(アーパネット)」が産声を上げました。

【ARPANET】
世界で初めて運用されたパケット通信コンピュータネットワークであり、インターネットの起源。アメリカ国防総省の高等研究計画局が資金を提供し、いくつかの大学と研究機関でプロジェクトが行われた。

しかし、ここには決定的な問題がありました。

ARPANET以外にも、衛星通信網や無線ネットワークなど、様々な独自ネットワークが各地で生まれ始めていたのです。

それぞれのネットワークは独自の言語で動いており、ARPANETの中にあるコンピュータは、別の無線ネットワークにあるコンピュータと会話ができませんでした。

人間でいえば「異なる国同士で言葉が通じない」のと同じ状態だったのです…!

ARPANETについてはこちらをチェック!

にゃん八にゃん八
まるでバベルの塔だな
カトウカトウ
バベルの塔?
人間が天にも届く塔を建てようとして、神に怒られた話ですよね?
にゃん八にゃん八
バベルの塔はそこが本質ではないぞ。
神は傲慢さを罰するために言葉を”混乱“させたんだ。
その結果、人々は互いに言葉が通じなくなり、建設を断念せざるを得なくなった
カトウカトウ
たしかに、皆がバラバラに建設してしまっている状況ね…!
聖徳聖徳
ここで登場するのが、スタンフォード大学で教鞭をとっていた若き日のビントン・サーフと、ARPAのロバート・カーンだったのであるぞ~
にゃん八にゃん八
そこで、二人は考えた。
個々のネットワークの違いを吸収し、どんなネットワーク同士でもデータをやり取りできる「万能な通訳」を作れないか?と
カトウカトウ
あー!
だから、インターネット(Inter-net:ネットワーク同士の間)という名前になったのか~!

革命的発明「TCP/IP」の誕生

1973年、サーフとカーンはある一つの論文の草案を書き上げます。

それが後に世界を変えることになる通信プロトコル、TCP/IPの原型です。

彼らの発明が画期的だったのは、通信の制御を「宛先」と「信頼性」という二つの機能に明確に切り分けた点にあります。

IP:宛先

まず、皆さん聞いたことあるであろうInternet Protocol、略して「IP」。

これは現実世界でいう「住所」と「封筒」の役割を果たします。

データという荷物にIPアドレスという宛先を書き、ネットワークという大海原へ送り出します。

ただし、IPの仕事は「届けること」に特化しており、中身が壊れていないかまでは保証しません。

IPのアドレスは、2の32乗の数字からなり、全部で約42億個のアドレスがありました。そして、インターネットが普及するとアドレスが足りなくなる恐れがあることから、IPv6が開発。IPv6は、2の128乗の約340澗(1澗は1兆×1兆×1兆)個のアドレスがあります。

TCP:信頼性

そこで補完するのがTCP(Transmission Control Protocol)です。

これは「几帳面な配送係」です。

送りたいデータを「パケット」という小包に分割して番号を振り、受信側でそれが順番通りに届いたかを厳密にチェック。

もし途中で一つでもパケットが失われれば、TCPは即座に「番号3番が届いてないぞ!もう一度送れ!」と送信元に要求します。

当初、この二つの機能は一つのプログラムとして動いていましたが、サーフたちは途中で気づきました。

「すべての通信に厳密なチェック(TCP)が必要なわけではないし、ルーター(中継器)に処理をさせすぎるとパンクする」

そこで彼らは機能を分離しました。

そして、信頼性が必要なWeb閲覧やメールにはTCPを使い、多少データが欠けてもリアルタイム性が重要な音声通話などにはチェックを省いたUDP(User Datagram Protocol)を使う方法を考えました。

この柔軟な設計こそが、インターネットが爆発的に普及し、動画も通話もWebもすべて飲み込むことができた最大の要因だったのです!

カトウカトウ
UDPってなんですか?
聖徳聖徳
UDPを一言で言うなら、「細かいことは気にしない! とにかくスピード命の特攻隊長」なのである~
にゃん八にゃん八
TCPが「慎重で確実な宅配便」だとしたら、UDPは「荷物が破損したとしても速達で届ける宅配便」のようなものか
カトウカトウ
全然分からないんですが…
にゃん八にゃん八
UDPの哲学はシンプルだ。
「届いたかどうかの確認なんて時間の無駄。質より量とスピードだ!」って感じだな
聖徳聖徳
UDPは、TCPと違いデータ送信前に相手のノードとやりとりは行わず、一方的にデータを送付するのである~。
音声や映像など即時性を求められる通信や、少量のデータを転送するアプリケーションは、UDPが使用されることが多いのである~
カトウカトウ
データが不完全なら困るんじゃないの?
にゃん八にゃん八
インターネットの世界には「正確さよりも、リアルタイム性が命」という場面がよくあるだろう?
もしZoomで会話中に一瞬ネットが悪くなっても、少し映像が乱れるだけですぐに戻る
カトウカトウ
そっか💡
TCPで通信にしてしまうと、 「あ、音声データが欠けた! 再送して! ストップ!」と映像が止まってしまい、数秒後に早送りで再生されてしまう感じか。
これだと、UDPよりも理解できない映像になってしまう
にゃん八にゃん八
そう、TCPは正確すぎるんだ。
過去の失われた一瞬を取り戻すより、「」の声を届ける方が重要な場合もある。
それをうまく使い分ける設計にしたのだ!

静寂の世界と「テキスト」への執念

なぜ、ビントン・サーフはこれほどまでに「機械同士の会話」に情熱を注げたのでしょうか?

技術的な探究心はもちろんですが、そこには彼の個人的な背景も深く関わっています。

サーフは先天的な聴覚障害を持っており、補聴器を常用していました。

また、彼の最愛の妻、シグリッドもまた、病気により聴覚を失っていました。

希望の架け橋

「電話」という音声中心の通信手段が主流だった時代、彼らにとって遠く離れた誰かと意思疎通を図ることは容易ではありませんでした。

そんな中、コンピュータを使ったテキスト通信であれば、耳が聞こえるかどうかは関係ありません。

彼は後のインタビューで、「電子メールの出現は、私にとって聴覚を取り戻すようなものだった」と語っています。

このプロトコルは、単に軍事用や研究用のものではなく、彼自身と妻、そして世界中の人々がハンディキャップを超えて繋がるための「希望の架け橋」でもあったのです。

カトウカトウ
なんだか素敵な話ね
聖徳聖徳
二人が初めてデートに行ったとき、選んだ映画は『サウンド・オブ・ミュージック』である~
にゃん八にゃん八
サーフはまだ手話を習得していなかったため、映画館の暗闇の中でシグリッドさんに必死に話しかけようとして、当然ながら全く伝わらなかったそうだ
カトウカトウ
この「伝わらないもどかしさ」が、後の通信技術への執念に繋がったのかもしれないね
聖徳聖徳
そして「初めての電話」は結婚して30年以上経ってからだったのである~
カトウカトウ
奥さんは耳が聞こえないし、結婚して数十年間、二人は一度も電話で話したことがなかったのよね?
聖徳聖徳
そうである~
シグリッドさんは人工内耳の手術を受けることを決意し、無事成功したのである~
にゃん八にゃん八
成功した後、出張中のサーフは、ホテルの部屋から自宅の妻へ電話をかけたんだ。
電話に出た妻が「もしもし? ビン、あなたなの?」と言った瞬間、サーフはその場で泣き崩れた
カトウカトウ
初めて「電話で妻の声を聞き、妻に自分の声が届いた」瞬間だったのね
にゃん八にゃん八
YouTubeの「自動字幕機能」や、Google Meetの「リアルタイム文字起こし」に力を入れているのは、サーフの影響が非常に大きいと言われているんだ。
彼はGoogleの社内会議でも、常に「情報弱者を作らないこと」を主張している

Googleの「伝道師」として、そして宇宙へ

1980年代、MCIという企業に移ったサーフは、世界初の商用電子メールサービス「MCI Mail」を開発し、インターネットを研究室から一般社会へと解き放ちました。

そして現在。

白髪に真っ白な髭、常に完璧なスリーピースのスーツを着こなすサーフは、Googleの副社長として「チーフ・インターネット・エバンジェリスト(最高インターネット伝道師)」というユニークな肩書きを持っています。

単なる名誉職ではなく、世界中のカンファレンスや政策決定の場に顔を出し、「インターネットの自由」「デジタルデバイド(情報格差)の解消」「AIの倫理」などについて提言を行っています。

彼は今もなお、インターネットの自由と中立性を守るために世界中を飛び回っていますが、彼の視線はすでに地球の外にも向いています。

太陽系インターネット(SSI)

サーフが今、最も情熱を注いでいるのが、太陽系インターネット(SSI)の標準化とテストです。

例えば、光の速さでも、地球と火星の間には片道数分から20分以上の通信遅延が発生します。

さらに、惑星は自転しているため、通信相手が地平線の向こうに隠れてしまうことも頻繁に起きます。

私たちが普段使っているTCP/IPは「常時接続」と「高速な応答」を前提としているため、宇宙空間ではタイムアウト(接続切れ)を繰り返して使い物になりません。

遅延耐性ネットワーク

そこでサーフは、DTN(Disruption-Tolerant Networking:遅延耐性ネットワーク)という新しいプロトコルを開発。

これは、通信が途切れたらデータを破棄するのではなく、次の通信機会が来るまで衛星などの中継地点でデータを大切に保管し、バケツリレーのように確実に届ける仕組みです。

彼は本気で「太陽系全体をWi-Fiスポットのように繋ぐ」ことを目指して活動しています。

カトウカトウ
私たちが普段、当たり前のようにタップしているこの画面の奥には、そんな執念が詰まっていたんですね
にゃん八にゃん八
そうだ。
技術というのは、魔法のように突然現れるわけではない。
誰かが『繋げたい』と強く願い、生涯をかけてルールを作ったからこそ、今ここにあるんだ…
カトウカトウ
分断されていた世界を「プロトコル」という糸で縫い合わせ、静寂の中にいた人々に言葉を与え、そして今、人類の知性を太陽系全体へ広げようとしているのか
にゃん八にゃん八
ブラウザに文字を打ち込むとき、その通信の背後には、ダンディなスーツを着た「インターネットの父」が立っていることを思いだしたいものだな
カトウカトウ
ビントン・サーフは、インターネットの守護神みたいね
にゃん八にゃん八
80代になった今も「インターネットはまだ完成していない、次は宇宙だ!」というバイタリティーは見習いたいもんだな!

AIや未来技術への警告と期待

ビントン・サーフは、最近のAIブームに対しても、長老としての視点から冷静な発言を行っています。

「AIは、言葉の『サラダ』を作っているに過ぎない」

AIは真実を理解しているのではなく、確率的に「それっぽい言葉」を混ぜ合わせているだけです。

彼が最も恐れているのは、AIがズレた答えを、さも正解であるかのように流暢に語ることです。

明らかな間違いなら笑って済ませられますが、AIの嘘は滑らかで説得力があります。

彼は、人間が思考を放棄し、この「自信満々な嘘つき」を盲信すること、そして投資家が「AI」というラベルだけで無闇に資金を投じる「バブル」に対して、強い危機感を抱いています。

それでもAIは「救世主」になり得る

一方で、彼はAIを否定しているわけではありません。

自身の聴覚障害の経験から、特定の分野では「人類の限界を超えるツール」になると確信しています。

一つは「究極のバリアフリー」。

リアルタイムの翻訳や字幕、視覚情報の音声化など、AIは障害を持つ人々の目や耳となり、社会との壁を完全に取り払う可能性を秘めています。

もう一つは「デジタル暗黒時代の回避」。

100年後の人類が、今の古いデータを開けなくなった時、AIこそがそれを解読・翻訳する「ロゼッタ・ストーン」になると期待しています。

クリティカル・シンキング

80年以上の経験を持つ賢者が私たちに送るメッセージはシンプルです。

「AIを使うなとは言わない。だが、絶対に信じるな」

AIはあくまで道具。

その出力に対して常に「本当か?」と問いかけるクリティカル・シンキング(批判的思考)を持てる人間だけが、AIに支配されることなく、その恩恵を享受できるとサーフは語っています。

平均収入は約765万円 !

ビントン・サーフの世紀の大発明から数十年。

インターネットは飛躍的な進化を遂げ、人類の英知と可能性を享受し続けています。

その技術を追求するその想いが今のITの可能性を引き上げ、今や、ITエンジニアは不可欠な存在となりました。

そして、2025年現在、フリーランスエンジニアの平均年収は全体の平均値は約765万円まで上昇。

さらに1000万円を超える人は全体の7.5%もおり、しっかり稼げている人がサラリーマンよりも多い割合です。

さらに人工知能の分野は、1500万円、2000万円と、さらに上も狙えるのが魅力。

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